まさひろの『複雑怪奇雑文雑多』

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『シャーロック・ホームズ 花婿の正体』本筋でないところが面白い短編。

1.本筋でないところが面白い短編

今回、ご紹介するのは『シャーロック・ホームズの冒険』の中の1編、『花婿の正体』です。この話は記憶に残るストーリーです。が、面白いか面白くないかというと私個人的にはそこまで面白い話ではなかったwww。本筋だけを考えれば嫌な気分が残るというか。俗にいう「イヤミス」という分類なのかもしれません(個人的感想)。

 

しかしこの話はじっくり読むと、興味深いところが多く散りばめられています。ちょっとしたところでいうと、この話の冒頭に『ボヘミアの醜聞』の後日談がでてくる。注目の「あの女性、アイリーン・アドラー」の後日談がでてくるわけではないですが、ホームズが事件解決のお礼にボヘミア王から「古金色の嗅ぎ煙草入れ」をもらったということをホームズが語ります。ホームズはあの事件でアイリーン・アドラーの写真だけでなく、別の物も貰っていたんだと新たな発見を感じます。

 

また細かいところでは、作品ごとの時間軸のことが出てきます。この『花婿の正体』は『シャーロック・ホームズの冒険』の3番目の短編です。そして前話の『赤毛組合』は2話目になります。しかし時間軸としては3話目の『花婿の正体』が先で、『赤毛組合』のほうが後ということになります。というのもホームズとワトソンの間で「事件は単純に見えるものほど奇妙なものがある」という議論が2話と3話で続いて交わされます(ホームズは「単純に見えるものほど奇妙なことが隠されている」という説、ワトソンは「単純なものは単純だ」という説で反対の説です)。もともとこの議論は3話目の冒頭でホームズがワトソンに語るようにして問いかけたのが始まりです。しかしワトソンはその説に疑義を呈した。そしてこの議論の続きが、2話目の冒頭でまた繰り返されます。3話目の話の流れを受けての議論となっています。そういう流れが今回の『花婿の正体』で分かるのが興味深いところです。

 

2.入れ歯を妻にほうりだす夫

個人的な話になりますが、この『花婿の正体』で記憶から離れない文章が出てきます。

 

裁判沙汰になった原因というのは、夫が長年の習慣として、食事を終えるごとに入れ歯をはずし、それを妻のほうへほうりだすようになったから

 

という文章です。これはホームズが先程の議論のなかでワトソンにいうセリフです。この文章というか事件は私の頭から離れずに残っています。正直、『花婿の正体』の内容自体は忘れても、たった1文だけのこの文章は、長い間、私の頭にこびりついてきました。

 

「入れ歯を放り出されたら、そりゃたまらんわな。少しは我慢できてもいつか爆発してもおかしくはない、しかし入れ歯をほうりだすってすごいな」「世の中って変なことがたまにあるから、これも変なことの1つかな。普通入れ歯を嫁さんに投げるやつはおらん」

 

そんな風にいろいろな解釈を考えながら、時折、頭にふっと思い浮かぶことがありました。入れ歯を放り出す絵のイメージが地味に強烈です。この話はなぜか私の頭にこびりついてきました。まあこの入れ歯に関することは、99%事件の本筋には関係のない話なのですが、私にとってこの『花婿の正体』を語るうえで欠かせない文章です。

 

3.かなり怪しい男に恋する女、罪に問われない男

話は変わって、少し本筋に関わることを書こうと思います、ようやくwww。この話を見終わり、しばらく時間が立って冷静な頭で考えると、

 

「ホームズに依頼した、男に騙された女はアホじゃないだろうか」

 

 と思います。というのも、明らかに、どう考えても、絶対的に怪しすぎる男に恋をして騙されているからです。あまり詳しく書くとネタバレになるので説明が難しいですが、この依頼人の女を騙した人物というのが、

 

「色つきの眼鏡をかけて」「口ごもるように、ささやくようにしかしゃべれなく」「言語やや不明瞭」「奇妙な声」「濃く黒い頰髭および口髭」

 

怪しすぎるだろ、この男は。文字しか見てなくても十分に怪しさが伝わってきます。「色つきの眼鏡」とかそれ一個だと別にそうでもないですが、奇妙な声や頬髭、口髭まで加わると怪しさしかない。こんな男に恋して騙される依頼人の女はどうかしてるとしか思えません。恋は盲目じゃないですが、どうかしてます、この女は。

 

まあこの女は語るほどの人物ではないので、次にいきます。次は騙したほうの男です。この男もチンケな男で語るに足りない男です。この男のやったことは当時のイギリスの法律に触れるものではないようで、ホームズもこの男を罰することはできませんでした。ただ男が逃げたあとで、ああいう男は次から次へと犯罪へと手を染めていき、最後には絞首台送りになると予言しています。もともとはこの男の起こした犯行がすべての元凶なので、いずれなんらかの罰を受けて欲しいと思います。

 

4.本筋は大したことがない。他の細かいところが面白い。

本筋に関してはサッと語らせてもらいました。私にとってあまり語ることがないのが「花婿の正体」の本筋です。正直、本筋よりも細かなところが気になる作品。本筋に関しては「騙された女、騙す男の両方がどうかしてる」というのが感想ですwww。

 

ただこの作品は「入れ歯を妻に放り投げる夫」という強烈なフレーズのおかげで、私の記憶に一生残ることになるでしょう。(タイトル名はおそらくいつか忘れますwww)