まさひろの『複雑怪奇雑文雑多』

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『シャーロック・ホームズ 赤毛組合』ドリフのコントのように滑稽な、だけどしっかり背景がある短編小説。

今回、感想を書くのは『シャーロック・ホームズの冒険』の中にある1編、「赤毛組合」です。この作品はかなり滑稽なところがある作品ですが、その背景にはしっかりとしたものがあります。赤毛組合にでてくるホームズの依頼人が滑稽な人物で、、、。ホームズシリーズにしては珍しく、クスッとしてしまう作品です。(今回ご紹介するのは深町真理子訳の「シャーロック・ホームズの冒険 創元推理文庫」版です)

 

1.赤毛組合の1番の面白さは滑稽な依頼人

赤毛組合の1番の面白さはなんといってもホームズに事件を依頼する、赤毛の親父でしょう。この親父がホームズに事件を依頼する理由もなかなか滑稽なものがありますが、それを更に面白くしたのがこの親父のキャラクター。この親父の面白さにホームズとワトソンも思わず、

 

ついには、ふたりそろってげらげらと笑いだしてしまった

 

と笑わずにはいられないキャラクターです。このキャラクターが女性だとしたら、ここまで可笑しさはでないでしょうね。

 

親父の具体的にどういうところが面白いかというと、あまり書くとネタバレになるので書きませんが、赤毛親父が犯人に騙されていることも知らず、報酬欲しさに真剣になっているところ。そしてその目論見が突然崩れ去るところで、思い余ってホームズに相談にくるところも面白い。赤毛だから金が貰えるなんてあるはず無いじゃないかとwww

 

この親父はおそらく最初から最後までホームズに馬鹿にされているwww。ホームズは謎解きの部分では「あのあまり賢いとはいえない」呼ばわりしているし、

 

しかし、あなた個人としては、その風変わりな組合に文句を言う筋合いはないんじゃないですか? 

 

と上から目線で親父に言っていますwww。明らかに愚鈍なホームズからすれば退屈な男を相手にするときの対応です。まあ一応の敬意は示していますけど。流石に依頼人ですから。

 

「赤毛組合」は依頼人の親父なくして語れない物語です。落語におけるドジな大工みたいな感じですwww

 

2.滑稽な親父とは裏腹に犯人の大胆な計画

 そんな可笑しいところから始まる物語ですが、話が終盤に差し掛かるに連れ、展開はシリアスになっていきます。大胆な犯人の計画と、国家を揺るがす大事件が潜んでいるからです。

 

そこもネタバレになるので書きませんが、この大胆な計画の前では、あの赤毛親父も登場人物の1人に過ぎません。いいように動かされた駒の1つです。そしてこの計画は成功すればイギリスを揺るがす大事件に発展しかねないほどの犯行です。その企みはホームズの推理力の前にあえなく潰えますが。

 

このあたりの流れ、1.冒頭の滑稽な親父とその一連のストーリー、2.そこから繋がる大きな犯行計画、このギャップの差がいいし、まさかそんな犯行を思いつくとはという、さすがホームズシリーズ、面白い。

 

3.犯人を逮捕する際の描写も息を呑む

この「赤毛組合」の記憶に残るところは、ホームズたちが犯人を逮捕する際の場面と真夜中に犯人たちが来るのを待つシーンです。ワトソンが書く、犯人たちを待つ描写が大好きです。

 

それからのひとときの、なんと長かったことか!あとで一同と話をつきあわせてわかったのだが、時間はわずかに一時間と十五分。それが私には、もうほとんど夜は過ぎて、外には夜明けがきているのではないかとさえ思われた。

 

このあとも描写は続きますが、その場の暗く静かで時間が止まった、緊張した現場を思い浮かべられるような描写です。見たことがない人はぜひ見て欲しい。

 

そのあとの犯人が捕まるシーンもいい。

 

「よし、問題なしだ」最初の男が言った。「鑿(のみ)と袋はもってきたな。あっ、しまった!とびおりろ、アーチー、とびおりろったら。つかまれば縛り首だぞ!」 

 

っていうwww。「鑿と袋はもってきたな」と言ったところまでは犯人は大丈夫だった。しかし次の「あっ、しまった!とびおりろ、アーチー」を言う段階ではホームズたちが犯人に踊りかかったんでしょうね。アーチーとびおりろ!!wwww

 

この言葉でホームズたちが飛びかかったのが分かるし、犯人たちの動揺が伝わってきます。このあたりの描写が生き生きとして面白いですよね。

 

4.赤毛組合はタイトルとともに中身も素晴らしい

まあこの赤毛組合は面白い短編です。そもそも赤毛組合というタイトルがいい。このタイトルは訳者によっては「赤毛連盟」とか「赤毛クラブ」というようですが、それでも特異で妙な名前のタイトルです。それだから余計に記憶に残る。

 

そしてこの短編の中身。赤毛の親父が妙な出来事に巻き込まれること、そしてその背景、犯人確保。短編でよくここまで詰め込んだなと。大変素晴らしいホームズ作品でした。